H.I. Art Works

Hart Imagination Art Works since 1998

Ayako

Posted on | 12月 24, 2005 | 2 Comments

# 001 コンビニエンスストア・店内

          30歳のOL彩子。
          日曜の夜にコンビニエンスストアで買い物をしている。
          缶ビールを手にとって六つ程買い物カゴに入れる。
          カゴの中には”柿の種”や”スルメ”等が同じく6品程
          入っている。

# 002 コンビニエンスストア・店外

店員       「ありがとううございました?。」
          彩子がコンビニから出て来て数歩歩いて立ち止まり
          ポケットからさっきのレシートを取り出して見る。
彩子       「・・・2006年4月30日。」
          軽く空を見上げる。
         「ようやく来たか・・・(微笑む)。」
          車に乗り込む彩子。

# 003 移動する彩子の車内

          夜、車のハンドルを握り移動する彩子。
彩子N      「私は5年前、不思議なコと出会った。
          これはそのコと過ごしたたった2日の出来事。」
          彩子の車が走って行く。

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                     A y a k o
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# 004 さつきのアパート(部屋)

          1ルームマンションの中、
          窓がうっすら赤く染まった夕方に携帯電話が鳴る。
          携帯電話の奥ではさつきがベッドにうつ伏せになって寝
          ている。
          さつきは電話の音に反応して頭を動かすと
          もぞもぞ起きてきて胡座をかいて座り電話をとる。

# 005 バンドの練習スタジオの中

          スタジオの中でバンドのメンバーが各自楽器のチューニ
          ングをしたりしている。
          ベース担当でリーダーのヤスがさつきに電話を掛けている
ヤス       「あ、さつき?ヤスだけど、
          今日練習5時からなんだけど・・・」

# 006 さつきのアパート(部屋)

          さつきは寝ぼけた表情で受話器を耳に当てている。
ヤス       「来れるなら電話切ってすぐ来いよ。」
さつき      「・・・!!(真顔になり携帯を切る)」
          携帯の液晶には16:20分と表示されている。

+++ 以下スタジオ内のバンドの演奏とカットバック +++

          さつきは慌てて部屋の隅に置いてあった鞄を取る。
          部屋の中央にあるテーブルの上の譜面を鞄に入れる。
          立て掛けてあるギターを手に取りケースに入れて背負
          う。
          玄関に行き靴を履く。

# 007 さつきのアパート(外)

+++ 引き続きスタジオ内のバンドの演奏とカットバック +++
          鍵を締めて走る。
          ドアには部屋番号が”402″と書かれている

# 008 同・駐車場(叉は路駐)

+++ 引き続きスタジオ内のバンドの演奏とカットバック +++
          車の座席にギターと鞄を積んで自分も乗り込む。
          さつきの車は勢い良く駐車場から出て行く。

# 009 移動中のさつきの車(昼)
          交差点手前でさつきの前を走っていた車が左ウインカー
          を出して突然止まる。
          さつきも慌てて急ブレーキを踏みハンドルに体が覆いか
          ぶさる。
          さつきの車は寸手の所で止まり追突は免れる。
          左折側の横断歩道を自転車が走って来てさつきの車の左
          側を通り過ぎて行く。
          さつきは両手でハンドルを握ったまま蒼ざめる。

# 010 +++事故 (回想)+++

          事故現場でパトカーが回転灯を点灯させて停まってい
          る。

# 011 さつきの車

          さつきはネッカチーフを巻いた自分の首をゆっくり右手
          で触り息をはく。
          さつきの車がゆっくりと走り出す。

# 012 道路

          さつきの車が走って行く。

# 013 バンドの練習スタジオのロビー

          倉庫を改装した建物の中。壁も床も濃い茶色の板張りで
          薄暗い。
          壁にはビートルズ等の古くて大きなポスターが額に入れ
          て何枚も掛けてある。
          ジェームス・ブラウンの曲がスピーカーから流れる中、
          ロビーに置いてある大きな観葉植物とバドワイザーの
          小さなネオンの光の間を抜けて さつきが歩いてくる。
          ロビーに面する部屋にある受付カウンターから見える
          位置にさつきが来ると、
          中年のスタジオの店員がさつきに声を掛ける。

店員       「毎度。さつきちゃんは?・・・」
          店員は目の前のカウンターに置いてある大きめの帳簿に
          目をやり一枚ペラリとめくる。
店員       「・・・今日はAスタジオね。」
          笑顔の店員にさつきは頭を下げて受付を出て隣のAスタ
          ジオに入って行く。
          中年の店員はカウンターの向こうでタバコを片手に新聞
          を読んでいる。
          練習を終えたさつきのバンドのメンバーがAスタジオか
          らゾロゾロと出て来て空いている木のテーブルを囲んで
          座る。
ヤス       「あんまり練習出来る時間ないんだから寝坊で遅刻はやめ
          てよ。」
          さつきは申し訳なさそうにペコリと頭を下げる。
          バンドでキーボードを担当しているサラリーマンの男
          タケさんが自販機でジュースを買ってテーブルの方に
          歩いて来る。
          ヴォーカルの雅美(あと数年で負け犬)がタバコに火を
          つけ、その隣に三十路に突入したドラムの木村(男)が
          座る。
          さつきはポケットからメモ帳とボールペンを取り出して
          書きはじめ、書き終えるとそのメモをテーブルの上に
          そっと差し出す。
さつき      ”ゴメン。今日は具合悪いから帰る”
雅美       「大丈夫?練習中も顔色悪かったけど。」
          さつきは少し笑ってみせて軽く手を挙げてメンバーに挨
          拶する。
一同       「お疲れ?。」
          さつきがスタジオから居なくなる。

# 014 同・外(駐車場)(夜)

          ギターと鞄を座席に積み込んでから運転席に座るさつき。
          シートにぐたっともたれて再び咽に手を触れて深い息を
          吐くと、ダッシュボードからMDを一枚取り出す。
          ”Ayako 2001.4.29”とラベルに書いてあるMDをカース
          テレオに差し込む。
          カーステレオから哀愁漂うアコースティックギターの音
          色が流れる。
          目を閉じるさつき。

# 015 同・中(ロビー)

雅美       「・・・(煙草の煙をフーっと吐く)ちょうど今くらいの
          時季だっけ。」
ヤス       「何が?」
          ヤスはテーブルの上の灰皿に煙草の灰を落とす。
雅美       「さつきが声出なくなったの。」
ヤス       「ああ、そうだな。・・・もう五年も経ったか、
          早いな・・・。」
タケさん     「え?さつきちゃんって昔喋れたの?」
雅美       「・・・元ヴォーカル。
          ヴォーカルの時のさつきのバンドはかなり人気もあって
          こりゃメジャーになるかなってくらいだった。」
木村       「マジで!?・・・そんな話今初めて聞いたよ俺。」
ヤス       「まぁ・・・そんなに軽々しく話すような事じゃないし、
          さすがにさつきの前じゃあ話すのもなんだしね。」
雅美       「事故った時に運が悪くて咽がね・・・。
          まあ、あのコの場合は生きてる方が不思議だけど。」
タケさん     「へ?、さつきちゃんの声聴いてみたいな?。」
ヤス       「・・・そんな事今本人がおらんから言えるけどさ?、
          声が出ないって分かった時は大変だったと思うよ。
          ま、ウチらにしてみれば生きとってくれただけで嬉しい
          けどさ?。」
木村       「ま?、そやろね?。」
雅美       「でも、声が出なくなってもまたギターで復帰するところ
          が凄いよね・・・。」
ヤス       「目標のギタリストがいるらしいよ。」
タケさん     「誰?」
ヤス       「いや、プロじゃないらしいよ。ギターの師匠みたいな
          感じじゃない?」
木村       「ふ?ん。」
ヤス       「でもこんな事言っちゃなんだけどさつきがギターに転向
          してしっかり立ち直ってくれてこっちも助かったよ。
          第三者のウチらが励ましてどうなるモンでもないし。
          ホント声が出んくなったって分かってからしばらくの間
          は声もうかつに掛けれんへんかったし。」
雅美       「そうだよね。今でもまだやっぱり気を使っちゃうしね。
          もうさつきと会ってから7年になるけど声が出なくなる
          前の方が気軽に話せたよね。」
ヤス       「ま、今は大分良くなってるんだからいいんじゃない?」
雅美       「まーね。」
タケさん     「・・・あの?、ところでさ、さつきちゃんのスタジオ代
          って、貰った?」
一同       「・・・。」

# 016 彩子の車・中

          夜、車のハンドルを握り移動する彩子。
彩子N      「そして彼女は私の前に現れた。」
          助手席にはさっきコンビニで買った袋とソフトケースに
          入ったギターが置いてある。

# 017 さつきのアパートの駐車場(あるいは路駐場所)

          さつきの車が駐車場に入って来る。
          さつきは荷物を持って車に鍵をかけてアパートに歩いて
          行く。

# 018 彩子(さつき)のアパート・玄関

          エレベーターからギターを背負ったさつきが出てきて
          部屋の前に歩いて来る。
          さつきはポケットから鍵を取り出して開けようとするが
          鍵が回らない。
          鍵を回そうと何度もガチャガチャしていると部屋の中か
          ら誰かが玄関に近付いて来る。
彩子       「(ドアの向こうから)はいはい、ちょっと待ちな。」
さつき      「!?・・・。」
彩子       「(ドアを開けながら)ずいぶん早かったじゃん。」
          彩子はさつきの顔を見て驚く。
          驚いて二人とも一瞬止まる。
彩子       「あんた誰?」
          さつきは一歩下がってゆっくり部屋番号を確認する。
          確かにさつきの部屋の番号。
          さつきはゆっくりと彩子の正面に立つと彩子の腕を引っ
          張って部屋から引きずり出す。
彩子       「痛っ!!(勢いで転んでしまう)」
          さつきは部屋に入ってすぐに鍵をかける。
          ドアに背を向けて深呼吸するするが、目を開けて驚く。

# 019 彩子の部屋・中

          部屋の奥に入って行くさつき。
          奥の部屋に入って立ち止まり呆然とする。
          自分の部屋とは全く違った状態の部屋。
          さつきは呆然とした表情から怒った顔になる。
          ギターと鞄を置いてから振り返り玄関のドアに向う。

# 020 同・玄関

彩子       「(外からドアをドンドン叩きながら)ちょっと!!」
          玄関のドアが開いて頭をぶつ。頭をおさえる彩子
          さつきはサササッとメモを書いて見せる
さつき      ”あんた誰?”
         ”の部屋にあった物どこやったの?”
          彩子はメモを奪ってクシャクシャに丸めてさつきの顔に
          ぶつける。
彩子       「ここはあたしの部屋!!
          あんた間違ってんじゃないの?
          何であんたにこんな事されなきゃいけないの!?
          彩子はさつきを睨み付ける。
          さつきは一瞬怯む。
彩子       「だいたいあんたさっき鍵開かなかったでしょう?
          あんたの部屋じゃない証拠じゃない。」
さつき      「・・・。」
彩子       「はい出ってった出てった。」
          彩子は中に入ってさつきの腕をつかんでひきずり出そう
          とするがさつきは後ずさりしてかわして手のひらを広げ
          て”ちょっとまて”という身振りをする。
彩子       「・・・?あんた喋れないの?」
さつき      「・・・(うなずく)。」
彩子       「ふーん、気の毒だねー。
          ・・・でもここあたしの部屋だから。」
          彩子はさつきを掴んで追い出そうとする。
          さつきは彩子の手を思いっきり振りほどき両手を広げて
          ”ちょっとまて”という身振りをする。
彩子       「・・・も?、何なのよあんた!?」
          さつきは免許証をゴソゴソ取り出して彩子に見せる。
彩子       「・・・何?」
さつき      「・・・(住所を指さす)。」
彩子       「(免許証を見る彩子)・・・あれ?・・・あってる。
          何で?(さつきの顔を見上げる)」
さつき      「・・・。」
彩子       「(さつきから免許証を奪って裏も確認しながら)
          ・・・前の住人・・・って事はないか。
          あたし新築で入ったし・・・。」
          さつきは怪訝な顔をしてメモを書き差し出す。
さつき      ”ここはあたしの部屋!! 出てって!!”
彩子       「何であたしが出てかなくちゃなんないの!?
          出てくのはあんたでしょう!?(さつきを睨む)」
          さつきはさっき書いた紙をもう一度突きつける
さつき      ”ここはあたしの部屋!! 出てって!!”
          彩子はむっとした表情でさつきを見るがふと何かを思い
          出したようにうなずく
彩子       「分かった。ちょっと手荷物は持たしてね。」
          彩子は部屋の奥に入って行ってすぐに戻って来る。
彩子       「邪魔したね。じゃ。」
          彩子が玄関から出て行く。
さつき      「・・・?」
          ゆっくり玄関に行き中から鍵をかけ部屋の奥へ入って
          行くさつき。

# 21 同・中(夜)

          再び変わり果てた部屋の状態。
          さつきはふらふらとベッドに座って横になる。
          すぐに”ガチャ”っと鍵の開く音がして顔を上げ扉の方
          を向く。
          ドタドタと足音がして部屋の扉が開く。
彩子       「(満面の笑みで)タダイマ。」
          彩子が鍵をチャラチャラと見せびらかす。
          さつきはバタリとベットに倒れて脱力感一杯にベッド
          からも落ちる。

+ + +  黒にフェードアウト  + + +真っ暗。

          彩子が冷蔵庫から缶ビールを取り出して閉める。
          床に転がっているさつきを横目にアヤコが缶ビールを
          テーブル(ちゃぶ台)の上に置いて床に座る。
彩子       「あんた意外とからかい甲斐があって面白いね?。」
          笑顔でビールを開けて口にする彩子。
          さつきはのそりと上体を起こしてアヤコをうらめしそう
          に見る。
彩子       「(飲みながらさつきを見て止まる)・・・飲む?」
          さつきは首を振って彩子を睨む。
彩子       「ところであんた泥棒じゃあないみたいだけど・・・
          一体何?」
さつき      ”それはこっちのセリフ!
          何で私の部屋にいるの!? 何で鍵を持ってるの!?”
彩子       「だから私の部屋だって。
          ・・・さっきの免許もっかい見せてよ。」
          さつきは免許を差し出す。
彩子       「・・・昭和53年10月生まれ・・・若けー!!
          あたしより六つも年下じゃん。今19?」
さつき      「・・・?(メモを書き出す)」
さつき      ”24”
彩子       「・・・変わってるね?。
          24だったら歳聞かれて19って答えるけど(笑)。」
さつき      「・・・。」彩子の携帯電話が鳴る。
彩子       「!?あ、(電話に出る)もしもし、え?今日来れないの?
          ・・・そっか、(さつきの方をちらっと見る)
          実はあたしもちょっと都合悪くなってさ、
          連絡するの忘れてたんだけど(笑)」
さつき      「!?(彩子の顔を見る)・・・!?
          (床に置いてある雑誌に目がとまる)」
          さつきは床に置いてある雑誌雑誌を手に取る。
          雑誌 は1998年の6月号。
          もう 一冊も手に取る。
          同じく1998年6月号。
彩子       「じゃ明後日にしよっか?・・・うん。○日。月曜」
          さつきは雑誌を置いて携帯を取り出して日付けを確認
          する。
          電話を続ける彩子。
          その姿を怪訝そうに見るさつき。
          さつきはもう一度雑誌を手に取る。
彩子       「じゃ、また。うん。おやすみ。(電話を切る)」
          さつきは雑誌を元に戻してメモを書いて彩子に見せる。
さつき      ”明後日は○曜日。”
彩子       「あれ?そうだっけ?」
          卓上カレンダーを手に取る彩子。
彩子       「・・・あってんじゃん。ほれ。」
          彩子はさつきにカレンダーを差し出す。
          受け取って両手で持って見るさつき。
          1998と書かれたカレンダー。
          さつきは1998の部分を指さして彩子に見せる。
彩子       「それがどうかしたの?」
          さつきはもう一度カレンダーの年を確かめる。
さつき      ”これ今年のじゃないよ”
彩子       「今年のじゃん。」さつきはもう一度カレンダーの年を
          確かめて彩子の顔を見る。
彩子       「何?」
          さつきはテレビをつける。チャンネルを1、2回変える
          と天気予報で止める。
          天気予報には”○○日○曜日と表示されている。
          もう一度カレンダーを見る。
          日付けと曜日はカレンダーと一致している。
彩子       「どうかしたの?」
          さつきは携帯を取り出して彩子に向ける。
彩子       「・・・あんたかっこいい携帯持ってるね?。
          ちょっと見せてよ。」
          さつきは軽く手のひらを出して彩子を制して少し携帯を
          操作してから彩子に渡す。
          彩子が携帯を受け取ると画面には彩子の姿が写ってい
          る。
彩子       「うわ!?何これ、写真撮れるの?すごいね?。
          今こんなのあるんだ!!(さつきの方を見る)」
さつき       ”・・・(首を振る)”
          さつきは財布からまた免許証とレシートやカード、
          新五百円玉を取り出して机の上に並べる。
彩子       「何やってんの?」
          さつきは机の上に出した物の日付けを順に指さす。
          それを見る彩子。
          次々に手に取って見る彩子。
          見終わるとさつきの顔を見る。
          さつきも彩子の顔を見る。

+ + + フェードアウト + + +

# 22 同・中(朝)

          寝いている彩子。
          テーブルの上はビールやお菓子がちらかっている。
          部屋の隅でさつきがギターを弾いている。
          弾き入るさつきの顔。
          ギターを弾くさつきの手。
          目を明ける彩子。
          しかし起き上がらずに目を閉じて聞いている。
          ギターを弾くさつきの手。演奏が終わる。
          彩子がむくっと起きてさつきの方を見る。
          さつきはそれに気がついて手で『ゴメン』と合図する。
彩子       「(微妙に首を降って)ううん、いい曲だね。
          ちょっと前から起きてたんだけど聴きたかったから寝た
          フリしてたんだ。」
          さつきはギターを置いてメモを書く。
さつき      ”私は生まれつき声が出ないわけじゃないんだ。”
          声が出なくなった私をずっと支えてくれた曲。”
彩子       「ふ?ん。あたしその曲好きだよ。誰の何て曲?」
さつき      ”メジャーな人じゃないんです。
          ギターの師匠みたいな人が弾いてくれた曲。”
彩子       「そっか。で、あんたこれからどうするつもり?」
          カレンダーを見るさつき
さつき      ”今日は1998年の◯月×日ですよね?”
彩子       「そうだよ。」
さつき      ”今夜、私は声を亡くすんだ。
          だからその事故が起きないようにしに行くつもり。”
彩子       「!?昔のあんたがいるんだ。!面白そう!私も行く!」
さつき      「(彩子をジロっと見る)・・・。」
彩子       「あ、あたしの車で送ってあげられるし何が起こるかわか
          んないから一人より二人の方がいいでしょ?ね?ね?」
          うなずくさつき。
彩子       「よっしゃ、じゃ、夜迄暇なんでしょ?遊びに行こ!!」

# 23 遊んでいる

          バッティングセンターにいる二人。
          ボーリングしている二人。他

# 24 どこぞの駐車場(夜)

          2人が車の座席に座って正面を向いている。
          彩子が助手席のさつきの方を向く。
彩子       「さ、そろそろ行こうか。」
          さつきは緊張した面持ちでゆっくりうなずく。
          彩子は車のエンジンほかける。
          彩子の車のヘッドライトが点灯して駐車場から出ていく。

# 25 移動中の彩子の車

          移動中、さつきが下を向いてメモを書いている。
          信号で車が止まる。
          さつきは彩子にメモを2枚重ねて渡す。
さつき      ”私はこの日、10時に歌うのを切り上げて、
          その帰りに事故を起こしたんだ。”
         ”だから10時よりも帰るのを大きく遅らせれば、
          事故には遭わない。声は失わないハズ。”
          彩子はメモを(まん中のどっかに)置き、
          前を向いて話かける。
彩子       「でも成功したらどうなるんだろう?
          いきなりあんた喋れるようになったりするのかな??」
          彩子はさつきの方を見る。
          さつきは黙って前を向いている。
          信号が青になって車が再発進する。

# 26 公園の側道(路駐する場所(夜))

          彩子の車が道路の端によって来てウインカーを出して
          止まる。
          二人とも降りて歩き出すが彩子がさつきを呼び止める。
彩子       「ちょっと待った。」
          さつきは止まって彩子の方を見る。
          彩子は車内から帽子とサングラスをとって車の前側から
          さつきに近付く。
彩子       「あんたそのまんま出てったら自分と同じ顔の人間に過去
          のあんたがびっくりするでしょう。
          はい、これつけてこれ被って。」
          彩子はさつきに帽子とサングラスを渡す。
          さつきは受け取った帽子とサングラスをつけて彩子の
          方を見る。
彩子       「似合ってる(笑)。」

# 27 歩道(夜)

          夜の歩道を無言で二人が歩いている

# 28?A 過去のさつきが歌っている公園(夜)

          夜、過去のさつきがギターを持って歌っている。
          遠くから見る二人。
          彩子は二人を見比べる
彩子       「・・・うわ、ホントにあんたがいる。
          ってかあんたあんな声してたんだ。」
          彩子は再びさつきの方を見る。
          さつきは無言でずっと過去の自分の姿を見つめている。
          弾き語りをするさつき(19)。
          さつきはサングラス越しに涙ぐむが、歌っているさつき
          (19)の所にゆっくり歩き出す。
彩子       「あ、ちょっと・・・」
          彩子はさつきの後を追ってさつき(19)の前に行く。
          さつき(19)のすぐ付近にやって来て二人は止まる。
さつき(19)   「♪♪♪(ちらっと二人を見る)」
          しばらくさつき(19)の歌を聴いている二人。
さつき       「!?(目線が動く)」
          さつき(19)のすぐ近くに置いてある鞄。
さつき      “あの鞄に原付の鍵が入ってる。”
彩子       「分かった。しばらく様子をみよう。」
          さつき(19)の歌を聴いている二人。
          歌い続けるさつき(19)。
さつき(19)  「あのさ?、実はトイレ行きたかったんだけど、
          ちょっと荷物見といて貰っていいかな?」
さつき      「・・・(笑顔でうなずく)。」
          走って行くさつき(19)を見守る二人。
          さつき(19)が見えなくなる。
          二人は顔を見合わせてうなずきさつきはさつき(19)
          の鞄に手をかける。
          鞄から取り出される鍵。
          鍵(+キーホルダー等)にはヒモが引っ掛かっている。
          走ってその場を離れようとする二人。
          カタっと何かが落ちる音がする。
          振り返るさつき。
          立ち止まって振り返っている。
          視線の先には巾着袋(鍵に引っ掛かっていたヒモの主)
          が地面に落ちている。
          ゆっくりと巾着袋の所へ戻って拾い上げる。
          袋を開けて中身を取り出すとMDプレーヤーが現れる。
          MDを見つめるさつき。
          一度目を閉じて開きながら天を仰ぐ。
          さつきはMDと鍵を鞄に戻す。
          そこに彩子が走って来る。
彩子       「ちょっとあんた何やってんのよ!!」
          彩子は鞄に手をかけようとするがさつきが制する。
          さつきは首を振って彩子を数秒見つめて笑みをこぼす。
彩子       「何で?どーして!? 早くしないと戻ってくるよ!!」
          さつきはさつき(19)が歌っていた場所に座ると
          ギターに手を掛けて弾き始める。
          彩子は肩を落として振り返るとさつき(19)が戻って
          来て彩子の横に来る。
さつき(19)  「おねーさんギター弾けるんだ。」
          さつきはちらっとさつき(19)の方を見てうなずく。
さつき      「上手いよ。昔はあんたみたいに歌ってたんだけどね。
          声が出なくなってギタリストになったんだ。」
さつき(19)  「え?、私だったら声が出なくなったら死んじゃうな?。」
          彩子がさつき(19)の後頭部をバシっと叩く。
さつき(19)  「イテッ!! 何!?」
彩子       「・・・(さつきの姿を見守る)」
さつき(19)   「ねえ、何か一曲弾いてよ。」
          さつきはうなずいて軽く弾きはじめる。
          さつきの指が指板の上で滑らかに動く。
さつき(19)  「・・・。あ、ちょっと!」
          さつき(19)は自分の鞄からMDを取り出すと
          小型のマイクをつけて録音ボタンを押す。
さつき      「・・・(さつき(19)の行動を見守る)。」
さつき(19)  「はい、いいよ。」
さつき      「・・・。」再び弾きはじめるさつき。
          徐々に感情が込み上げる。
          座って並んで聴いている彩子とさつき(19)。

# 028?B 部屋の中・回想・臨機応変に演奏シーンとカットバック
          さつきが首に包帯を巻いて座り込んでタバコをすってい
          る。

# 028?C 部屋の中・回想・臨機応変に演奏シーンとカットバック
          携帯が鳴って受話器を取ったが何も喋れないさつき。

# 028?D スタジオの中・回想・臨機応変に演奏シーンとカットバック
          一人でスタジオでマイクに向かうさつき。

# 028?E 過去のさつきが歌っている場所(夜)
          サングラスの奥で目に涙を滲ませるさつき。
          滲んで見えるさつき(19)。

彩子       「・・・。」さつきが演奏を終える。
彩子       「・・・。」
さつき(19)  「・・・おねーさん凄い演奏するね。
          めちゃかっこ良かった。名前て言うの?」
          さつきが返答にこまっていると
          アヤコが変わりに答える。
彩子       「アヤコだよ。」
さつき(19)  「ふ?ん。」
          さつき(19)は腕時計を見る。
さつき(19)  「あ、やべ。あたしもう帰らないと。」
彩子       「あ?、ウチらももう行くわ(さつきの方を見る)。」
さつき      「・・・(うなずく)。」さつき(19)に背を向けて
          歩き出す二人。
さつき(19)  「ねえ!」
          さつきと彩子は立ち止まって振り返る。
さつき(19)  「また、来てよ。あたし毎週○曜日ここに居るから。」
          沈黙したままの彩子とさつき。
さつき      「・・・(ゆっくり右手をあげる)。」
          さつきはゆっくり右手を大きく差し出して
          手のひらを広げると、その力を抜いて軽く手を振る。
          さつき(19)はさつきの真似をして笑顔で手の平を
          大きく開く。
さつき      「・・・(悲し気な表情でさつき(19)を見ている)。」

# 029 夜道・歩道橋の上

          さつきと彩子がトボトボ歩いていると、
          車の急ブレーキと鈍い音がする。
          足を止める二人。
          さつきは右手で口をおさえて左手で彩子の手をぐっと
          つかみ体を振るわせる。
          彩子はそんなさつきを抱きしめる

# 030 夜の公園

          さつきが独りでベンチに座っている。そこに彩子が
          缶コーヒーを持ってやって来る。
彩子       「はい。あんた何であの時鍵戻したりしたの?」
          さつきは缶を開けてコーヒーを飲む。
彩子       「・・・ま、言いたくなきゃいいけどね。
          ってゆ?かおかげで喋れないまんまだし。」
          さつきがメモを書き始める。その様子を見守る彩子。
さつき      ”何で私がアヤコなんですか?”
彩子       「・・・(笑)。あたしの名前だよ。」
さつき      「・・・(少し驚いてから表情が緩む)。」
          暗い表情に戻って再びさつきはメモを書く。
さつき      ”私は声を取り戻せるかもしれないと思って舞い上がって
          た。”
彩子       「だって取り戻そうと思えば取り戻せたでしょ?」
さつき      ”初対面じゃなかったんですね。”
彩子       「・・・?」
さつき      ”私は19の時にアヤコさんに会った事があった。
          そして私がずっと憧れていたギタリストもアヤコって
          名前だったんです。”
彩子       「あそっか、あの子娘があんただもんね・・・!?
          ってゆ?かあの子娘があんたに成長するんだ!!
          とても信じれんな?。」
さつき      「・・・(笑)。」
さつき      ”声をなくしてから私はずっとあの曲に支えられてた。
          あの人みたいなギタリストになりたいって、
          ずっと思ってた。
          5年間ずっと。
          でも彼女は未来の自分だった。”
彩子       「・・・そっか、・・・未来のあんたが弾いたから
          あんたも弾いたんだ。」
          さつきは首を振る
さつき      ”未来の私が何を考えてたのかは分からない。”
         ”声をなくしてから死ぬほど辛かった。”
         ”だけど私は声をなくしてから過ごした時間を誇りに
          思ってる。”
         ”あの子も辛いだろうけど”
         ”きっと自分に自信を持てる日が来ると信じてる。”
         ”だから私は彼女からから受け取ったバトンを”
         ”あの子に渡した。”
          涙目で彩子を見るさつき。
          彩子はさつきの顔を見てから前を向く。
彩子       「・・・あんたすごいね。私はあんたの事尊敬する。
          私はここ最近の5年間なんてなんとなくだらだら過ごし
          て来ただけで、戻れるなら戻りたいと思うから。
          元気出せ!!(さつきの背中を叩いて立ち上がる)」

# 031ーA 彩子のアパート・外(夜)

          アパートの前に彩子の車がやって来て止まる。

# 031?B 同・外・車内(夜)

彩子       「よし、今日も飲も!! あたしビール買って来るから先に
          部屋帰ってて。」
          さつきがうなずくと、彩子は鍵をさつきにわたす。

# 031?C 同・外(夜)

          車を降りてドアを閉めるさつき。彩子の車が発進する。
          さつきはそれを見送ってから振り返りアパートに入って
          行く。

# 032 同・玄関前(夜)

          玄関のドアの前まで来て鍵をあけようとするさつき。

さつき      「!?(鍵が開かない)。・・・!!」
          さつきはポケットを探り、中から自分の鍵を取り出す。
          さつきは緊張した表で自分の鍵をドアノブに差し込む。
          ゆっくり回すとガチャリと鍵が開く。

# 033 さつきの部屋・中

          玄関が開いてさつきが入って来て電気をつける。
          ゆっくりと部屋の奥に歩いて行くさつき。奥の部屋の
          ドアを開けて電気をつける。
さつき      「・・・。」
          部屋はすっかりさつきの部屋の状態に戻っている。
          さつきはゆっくりベッドの方へ歩くと一旦腰を落として
          からうつ伏せる。
          仰向けに寝転がって片腕で目を塞ぐようにしている。
          しばらくそのままにしていると玄関のベルが鳴る。
          不機嫌そうにのそりと立ち上がって玄関へと歩く。
          覗き穴をちらっと見る。

さつき      「!?(慌ててドアチェーンを外して鍵を開ける)」
          ドアを開けるとそこには少し老けた彩子がさつきの
          ギターを背負って立っている。
彩子       「よ、久し振り。」

# エンドロール

初版 2002年9月

その後適当に改訂

Comments

2 Responses to “Ayako”

  1. Kao
    3月 9th, 2006 @ 11:11 PM

    面白かった。ちょっとどきどきした。
    さすがだね。

  2. いしかわ
    4月 7th, 2006 @ 12:41 AM

    う・・・今更ながらコメントありがとう^^;

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