Vol.10 "屈辱の最北端"


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 朝5時に目が覚めたが結局出発したのは8時だった。曇り空の下さっそうと日本最北端の宗谷岬を目指す。海岸線を少し北上するだけだ。すれ違うバイクにピースサインをする。おそらくBMWらしき”オトナのバイク”に乗ってジェットヘルにサングラスのおじさんが笑顔でピースを返してくれる。と、その後ろを走っていたライダーは手を振ってくれている。北海道におけるピースサインは人によっていろいろリアクションをしてくれて楽しめる。

 長い間手を振ってる。。。「あ、女性ライダーか、可愛らしいゼスチャーだな〜」と思ってすれ違った瞬間我に帰る。おさげの髪が出ていた。ハッキリ確認は出来なかったが見覚えのあるレザースーツに見覚えのあるバイク。。。慌てて振り返るもすでに小さくなっている。。。が。。。間違い無い!! 同じ色のバイクに同じレザースーツ、同じおさげ髪の女性ライダーなんているもんじゃない!! 道の駅幌加内であったオネーチャンだ!! あの時自分はヘルメットを被って会話をしていたので、彼女はすれ違う前からおそらくわかっていて手を振っていたのだろう。

 バ、バ、バ、馬鹿な。。。前方から走って来たと言う事は既に最北端に到達して来たのか。。。

「先越された〜〜(ToT)」

 いやいや、でも、ちょっと待てよ〜、道の駅幌加内から結構距離あるぞ。確かに道草食ってたけど、巡行速度もかなり速かったぞ。途中追い越しもバンバン掛けたし暗くなるまで走ってた。。。な、何故だ。。。納得がいかない。しかし、現実は現実なのだ。。。きっと彼女はヘルメットの奥で ”してやったり”の笑みを浮かべている事だろう。。。

 8時40分、宗谷岬到着。自宅から約1900kmの日本最北端の地で達成感に浸る予定だった。「俺はやったぜー!!」と心の中で叫び、そして生きている喜びを味わう予定だった。それがどうだ、頭の中は敗北感に占領され虚しさだけが漂った。。。ふっ、どうせオレの人生こんなモンさベイベー。いつも、いつも、いつも。。。(T_T)とりあえず最北端の地で間宮林蔵の像に向き合いイジけた。ここでイジける奴も珍しいだろう。

 午前9時、失意に包まれながら南下を開始した。


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